参考図書(数学)
注意
- 独学の部分は自力のみの人や初めてその分野を勉強する人を対象にしています。
- 所詮は個人的見解なので実際に中身を見て判断してください。
公式集
- 証明が必要なくて、結果だけが必要なものは、wikiやWolfram MathWorldに大抵書いてあります。
- 岩波数学公式集:森口繁一、一松信、宇田川(金圭)久著
あると便利な公式集です。Iは級数・フーリエ解析、IIは微分積分・平面曲線、IIIは特殊関数となっています。IIはあると相当便利です。IやIIIはIIほど使いどころが幅広くないのであったらあったで便利なかんじです。
物理数学
- 物理の数学:薩摩順吉著
物理を勉強しようと思ったときに取り合えず選んでおけば無駄にならない本です。物理の主要な分野で必要になる数学が大体書いてあるので、基本的な公式集扱いとして持っておくのにも向いています。
この本に書いてない話に出会ったら、より専門的な本に手を出すようにすると無駄が少なくなると思います。
(独学:可)
- 新応用数学:高遠節夫(監修)
応用というより実際に出てくることが多い計算についての本です。電磁気の勉強の前あたりに読んでおくと便利な内容で、入門的な力学で出てくる数学程度は知っていることを要求している雰囲気です。
説明が簡潔にまとまっていて、例題もかなり分かりやすいです。また、簡潔で見やすい構成なので辞書的な使い方もできそうです。
数学の細かい説明は必要なく、取り合えず具体的な計算が知りたいという人に向いていると思います。
(独学:可)
- Mathematical Physics:S.Hassani著
数学よりの内容です。物理とついていますが、数学の人が入門用や補助的に読むのに向いていて、入門的な物理でこの本に書いてある内容が必要になることはほぼないです。専門的に量子論や相対論を勉強しようと思ってる人が読むような内容です。ただ、説明の仕方が数学の人でなく物理の人を想定しているような雰囲気はあります。
結果だけが書かれている場合もありますが、証明や途中式はわりと親切に書かれています。
1000ページありますし、値段も高いので買うときは内容をよく見てからの方がいいです。
(独学:数学に興味あるならやや可)
解析学
- 微分積分学:伊藤雄二著
標準的な数学の本で、専門的な数学の入門書という雰囲気です。この本で数学の考え方に慣れておくと後々便利です。ただ、証明が微妙に分かりづらい箇所が結構あります。
例が多く載っているので、物理の人は細かいことを気にせずに例を読んでいけば効率がいいと思いますが、入門的な物理で必要になることはほぼないです。また、第一章は飛ばして、必要になったら見るようにした方が余計な手間を省けます。
(独学:大体可)
- 解析入門:小平邦彦著
高校数学から変わる点についても簡単に触れています。簡潔にまとめられていて、数学的な言い回しがあまり使われてないので読みやすいです。言葉の定義が分かりやすいですし、証明もそれなりに分かりやすいです。
専門的な数学がどんなものか知りたい人や最低限の知識で十分という物理の人に向いていると思います。
(独学:大体可)
- Introduction to Real Analysis:R.G.Bartle, D.R.Sherbert著
説明がかなり丁寧に書かれていて、他の本だと当たり前のこととして説明なしで進んでしまうような注意点についても触れてあったりするので、最初に読むのに向いています。妙に分かりづらく書かれている場合もありますが証明も丁寧です。証明が丁寧なので、数学の証明の仕方に慣れるのにも適しています。また、具体例も多く載っています。
物理の人がなんとなくで読むには使いどころのない内容が多いので、本格的な数学が必要になったときに選ぶのがいいと思います。
(独学:可)
線形代数
- 物理現象の数学的諸原理:新井朝雄著
物理の人に向けた数学の本で、数理物理に興味がある人への入門的な本です。ベクトル空間と物理の関係を説明しています。必要ない人にはどこまでも必要ない内容なので、興味のある分野で必要かどうか判断してから読んだ方がいいです。
用語の説明は丁寧なんですが、数学の感覚で話を進めて、その論理展開も数学的なので、証明の結論に至る流れが慣れていないと何を言っているのか分かりづらいです。その上、中間部分の説明を飛ばしている箇所が結構あります。4章以降と付録Aをざっと読んでから1章に戻ると読みやすいかもしれません。
相対論に興味がある人は早めに読んでおくと、実際に相対論に触れるときに挫折する要因が減ります。
理論物理に興味がある人は4章を一度は目を通しておくことをお勧めします。
(独学:数学表記や言い回しに抵抗がなければ大体可)
- 線型代数入門:齋藤正彦著
ベクトル空間の話は後に回して、先に具体的な計算の話が書いてあるので、高校から大学の数学へ移行するときに読むのに向いています。ある程度の数学用語は知っておいたほうがいいです。
説明が微妙に不親切なので、最初の方できついと思ったらもっと入門的な本から始めたほうがいいです。また、物理の人は物理向けに書かれた同じような内容の本を読んだほうが効率がいいです。
(独学:やや可)
- ベクトル空間:竹山美宏著
ベクトル空間の導入部分の話をかなり丁寧に示しています。自明なこととして証明が省かれることが多い部分もちゃんと書いてあるので、数学に慣れていない人でも読みやすいです。
一番最初に読む数学の本としても向いていますが、物理数学としての線形代数程度は知っていた方が良いです。
物理でもこの本で出てくるような内容は知っているとしている場合が多いので、数学に興味ある人は読んでおくと便利です。
(独学:可)
微分方程式
- 工学系のための常微分方程式:秋山成興著
工学系とついているだけあって、力学の具体例が多く載っています。数学用語がほぼ使われていないので微分方程式を初めて勉強しようとする人に合ってると思いますし、下手な力学の本を読むより便利かもしれません。appendixに対数や積分の話も載っています。ただ、数学的な厳密性なんかが欲しい人には全く向いていません。
(独学:可)
- Partial Differential Equations:L.C. Evans著
この本で厄介なのは使われている記号の説明が分かりづらいことと、前提知識が多い点です(appendixはおそらくほぼ役に立たないです)。その上、途中計算がそれなりに書いてあるように見えて、分かりづらい計算部分は書かれていないことが多いです。なので、斜め読みですませないで、じっくり読む本です。
また、例題はありますが具体的な解き方にはあまり触れてなく理論の話が主なので(数学の本)、物理の問題を解くための知識が欲しい人には向いていないです。
最初に読むのでなく、解き方を説明している別の本で偏微分方程式に触れて、理論も本気で知ろうとなったのなら読むのがいいと思います。
(独学:不向き)
- Differential Equations and Linear Algebra:G. Strang著
解き方だけでなく、やや数学よりの話も知りたい人に向いています。入門部分の説明を省かずにしているので読みやすく、常微分方程式に関する話は大体書いてあります。物理での具体例も書いてあるので、この本を持っていればそうそう困らないです。証明や計算も丁寧に書いてあります。
題名にもなっている通り、線形代数についてもしっかり説明しているので相当便利です。常微分方程式と線形代数という物理の勉強を始めようと思う人に必要な内容が、これ1冊でまかなえます。
ただ、具体的な微分方程式が解ければ十分という人には情報過多なので、値段との折り合いがつかないかもしれません。
(独学:可)
複素解析
- 複素解析とその応用:新井朝雄著
数学的に複素解析を説明している本です。一応物理をターゲットにしていますし、結構丁寧に説明しているので、数学的な説明をしている本の中では分かりやすいほうです。数学系向け以外の本で勉強した後に、より数学的な内容が知りたくなったら読むようにした方がいいと思います。
数学系の本なので当たり前といえば当たり前ですが、具体的な例があまり載ってないので実際の計算の仕方を知る本としてはいまいちです。
付録Aを見てダメだと思ったら手を出さないほうがいいです。
(独学:専門的な数学表記への慣れしだい)
- 理工系のための解く!複素解析:石井彰三監修、安岡康一、植之原裕行、宮本智之著
取り合えず複素数が使えるようになりたいという人に向いている本です。ほぼ問題で構成されているので適当に解いていればなんとなく身につきます。この本を踏み台にしてもっと詳しい本に進めばいいと思います。
(独学:可)
- 複素解析の技法:藤原毅夫著
工系数学講座シリーズの1つです。複素数の基本的な情報を上手く抜き出して説明しているかんじがします。ただ説明がすごく詳しいというほどではないので、引っかかる時は引っかかります。途中式は結構丁寧に書かれています。
物理で必須になる特異点と複素積分のあたりの説明も実際に使用するための必要な情報を得るのには十分です(数理物理みたいな場合でない限り)。
(独学:多分可)
フーリエ級数、フーリエ変換
- フーリエ解析と偏微分方程式:E. クライツィグ著(阿部寛治訳)
工学系向けに書かれたフーリエ解析の本です。なので、数学的な細かいことを知りたい人でなく、具体的な問題で使用出来るようになりたい人に向いています。説明も丁寧なのでフーリエ解析に触れる最初の本としてはかなり優秀です。
ちなみにラプラス変換についても書いてあります。
(独学:可)
- Fourier series:Georgi P. Tolstov著(Richard A. Silverman訳)
物理数学程度の数学知識で読める数学よりのフーリエ級数の本です。フーリエ級数を扱う上で必要な話は大体書いてあるので、この本で足りない部分を他の本で補うようにすれば便利だと思います。フーリエ級数の計算だけでなく、物理で出てくる偏微分方程式への使用例も載っています。
説明や途中式に極端な飛びがあまりないので読みやすいです。
(独学:可)
群論
- 群と表現:江沢洋、島和久著
数学向けの群論の本です。物理の人が分かりづらいと感じる、よくある数学の本です。説明も結構飛びがありますが、言葉の定義は結構分かりやすく書いてあります。
この本の致命的なところは、物理で出てくる例を使っているのに分かりづらいことで、何をどうしたらそうなるのかを読み取るのが大変です。数学の話になんとなく物理の話をつけ加えたというかんじです。
入門的な本の後に読むにしても微妙なので、補助的に手元にあったら便利程度な気がします。
(独学:数学好きならやや可)
- Quantum Mechanics:Symmetries:W. Greiner, B. Muller著
題名からは分かりづらいですが分野的には群論で、主に量子論(クォークまで触れてます)で出てくるリー群についてです。数学的な本にあるようなリー群の話はしていなく、量子論での具体的な話をしつつ、どのようにリー群を使っているのかを説明しています。基本的な素粒子関連の話は、この本で説明されている範囲の知識で大体どうにかなります。
量子力学を知らないで、物理にも興味がない人が読むと変なところでわけが分からなくなるかも知れません。
このシリーズの特徴通り計算が詳しいのはいいんですが、文章の分かりづらさが他のより気になりました。
(独学:可。もう一冊似た内容の本があると便利)
- Group Theory and Its Application to Physical Problems:M. Hamermesh著
物理向けに書かれた数学の本です。数学と物理の中間的な内容なので、物理の人で数学よりの話が必要になったときに読むと便利です。物理向けの表記になっていて読みやすいですし、単語の説明や導出が丁寧なので最初に読む群論の本としても向いています。物理の話としては量子力学が主になっています。
必要になる線形代数についても書いてあるので便利です。
(独学:大体可)
- An Introduction to Tensors and Group Theory for Physicists:N. Jeevanjee著
素粒子向けの群論の本です。扱っている例が素粒子よりというだけなので、他の分野の人でも平気です。Greinerのと違い数学の話から入っていますが、数学的な定義の後に物理で馴染みのある具体的な例を示しているので分かりやすいです。群論も数学的な一般論でなく物理でよく必要になる範囲内に制限しているので、使い道がよく分からない数学の話に触れずにすみます(そういうのを必要とする人には向いていないです)。ただ、実際に示して欲しい話が問題にまわされていることが時々あるのが厄介です。
最初に線形代数の話をしてから群論に移っているので、素粒子に興味がある人は早めに読んでおくといいかもしれません。
似た内容の「An Elementary Introduction to Groups and Representations」(arXiv:math-ph/0005032)も合わせて読むといいと思います。
(独学:大体可)
ヒルベルト空間
- ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄著
ヒルベルト空間の話の最後に量子力学への適用を少し付け足した内容で、数学の本です。物理の人は量子力学という題名に期待しないほうがいいです。
ベクトル空間の知識があればなんとか読めると思います。証明も、分かりやすさは別にして、大体書いてあるので基本的な定理を知るのには十分です。ただ、仕方がない面もありますが、ルベーグ積分を知っていること前提な部分が多いのが厄介です。
量子力学に興味を持つ数学側の人に向けた構成なので、物理側の人には向かないです。
(独学:数学の準備があれば大体可)
- Quantum mechanics in Hilbert space:E. Prugovecki著
ヒルベルト空間に関する数学の本です。ベクトル空間の基本事項は知っているとして書かれています。題名に量子力学がついているように、量子力学をある程度意識した内容になっていますが、ヒルベルト空間の数学の話がメインでそれに量子力学の話を適用例として付け加えているかんじです(物理の本ではない)。
用語の説明が雑ですが、話の展開にあまり飛びがないので読みやすいです。証明も丁寧にしてあるのが多いですし、線形代数の数学の本を読んでいれば詰まることはあまりないと思います。また、分りづらい測度論関係を読み飛ばしても致命的なことにならないように書かれてはいます。
量子力学で出てくるヒルベルト空間の話題は大体載っているので、これ一冊で済ませられます。
(独学:数学の準備があれば大体可)
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