参考図書(物理)
注意
- 独学の部分は自力のみの人や初めてその分野を勉強する人を対象にしています。
- 物理の考察の深さとかなんかより、分かりやすさ重視で判断しています。
- 所詮は個人的見解なので実際に中身を見て判断してください。
ネットで見れる論文
- ArXiv e-print archive
雑誌に投稿される前段階での論文が載っているサイトです。雑誌に載ったものも最近のなら見ることが出来ます(図を外しているものとかもありますが)。
- HAL
ArXivと同じ趣旨のフランス版です。ArXivとの互換性もあるようです。フランスのサイトなのでトップページはフランス語ですが、英語に切り替えられます。
- Progress of Theoretical Physics
日本の理論物理学の学術論文誌です。2012年に発行が終了していますが(PTEPに移行)、無料公開されています。
- KEK
研究者向けページの図書室・研究報告での所蔵資料検索(KISS for Preprints)で見ることが出来ます。
ネットで見れる出版本もどきや講義ノート
- googleのブック検索:相当な量のページを見ることが出来る場合があります。
- 著者のホームページ:出版される前段階のものがあったりします。
- 大学のホームページ:授業の講義ノートが見れる場合があります。
- ArXiv:論文で書いたものを再構成して本にしているという場合があるので、断片的な部分を見ることが出来ます。
例えばpolchinski著の「String Theory」と同じような内容のものがpolchinskiで検索すると引っかかります。
- Bookboon:公開されていて自由に見ることが出来ます。
- freebookcentre.net:公開されている講義ノートとかのリンク集です。
オープンコースウェア
Scholarpedia
査読ありの科学系ウィキペディアです。有名どころが書いているようです。査読があるのでウィキペディアより信頼性は高いですし、専門的なことが書いてありますが、量がそんなにないので目当てのものがない可能性が高いです。
Semantic Scholar
論文検索サービスです。arXivに載ってるものも引っかかります。まだそれほど特別便利とは言えませんが、arXivで直接検索するより情報が得やすい気がします。
力学
- 振動・波動:有山正孝著
力学を一通りやった後に読むと割かし簡単に読める内容です。計算や説明が詳しく書かれているので一人でやるにはもってこいですし、波動について知りたい人が初めに読む本としては優秀な部類に入ります
(独学:可)
- 力学:近藤淳著
標準的な本です。分かりやすいと言えば分かりやすく、分かりづらいと言えば分かりづらいです。
(独学:真面目にがんばれば可)
電磁気学
- 電磁気学:J.D.ジャクソン著(西田稔訳)
入門用ではなく、電磁気を本格的に勉強しようと思った人用です。先に入門的な本とやや専門的な本を読んでから手を出したほうがいいです。電磁気の話はほぼ載っていますが、それほど親切に書かれていないので、この本だけですまそうとすると苦労します。
電磁気関連では参考書として使われていることが多いので、電磁気の分野に興味があるなら目を通しておくと便利です。
また、電磁気の単位系についてはこの本を見ればはっきりします。
(独学:きつい)
- 電磁気学:中山正敏著
わりと丁寧に説明が書かれています。それでも、曖昧に書かれてたり、単語の説明がなかったりするので、分かりづらい箇所がそこそこあります。先にもっと入門的な本を読んでおいた方が読みやすいです。
磁場の導入が磁荷と電流の両方で書かれていますが、量子力学のスピンをある程度知っていること前提になってます。
(独学:多分可)
- Introduction To Electrodynamics:D.Griffiths著
電磁気の話は大体書いてあり、力学を真面目にやった後に電磁気をちゃんと勉強しようと思ってる人に向いています。何を導入して何を求めたいのかがはっきりしているので読みやすいですし、計算も詳しく書いてあります。ただ、言い回しが妙に分かりづらい文章がちょくちょくあります。
必要になるベクトルの話も書いてあり、そこでつまずかなければ多分読んでいけます。
電磁気の単語や表記の混乱についても触れているので、表記の違う別の本を読むときに便利です。
(独学:可)
量子力学
- 量子力学:河原林研著
上下巻に分かれている本の下巻、もしくはSakuraiの簡易版みたいな本です。ブラケットの導入から始まって、50ページ目あたりで経路積分を導入するという初心者を置いていく構成になっています。それ以降も初心者にとっては分かりづらい角運動量、対称性の話と続いていきます。その上、説明や途中計算が親切というわけではないです。というわけで、やる気に満ちていないと初心者は1章と2章の半分ぐらいまで読んだら暫くこの本を放置する目にあいます。
別の入門的な本を読んだ後に読むのが自然な流れの気がしますが、この本を2冊目に選ぶ必要性もそんなにない気がします。取り扱っている内容が独特なので、そういった話が必要なら読むのが合っていると思います。
(独学:きつい。2冊目ならやや可)
- 量子力学(上) 専門外の人が1人で理解するために:島田憲一著
題名に偽りのない内容です。この本よりも分かりやすいちゃんとした量子力学の入門書はないんじゃないかと思えるぐらいです。特に前半の、実験結果とそれに対する理論の構築が他の本に比べて非常に丁寧に書かれています。数式も丁寧に追ってあるので、力学に必要な数学の知識程度でなんとかなります。
ただ、数学の厳密性があまりなく、本当にこれでいいのかと思うような部分があるので、この本を読んだ後にもっと専門的な本を読むほうがいいです(ディラックやSakuraiとか)。
上巻となっていますが、下巻が出てないのが非常に残念です(上巻で角運動量や水素原子まで扱ってますが)。後、なぜか値段が安いです。絶版なのかな。
(独学:可)
- 現代の量子力学(上、下):J.J.Sakurai著(桜井明夫訳)
ブラケットから始める量子力学の話をしっかりと知りたい人用です。それなりに親切に書かれていますが、経路積分に入るあたりから計算を追うのが辛い部分が多々出てきます。量子力学を何も知らない段階で1冊目に読むのには向いてませんが、量子力学を本格的に勉強しようと思うなら、上巻は一度目を通しておくといいです。下巻は興味があれば読めばいい程度な気がします。
ブラケット表記の定義とそこからシュレーディンガー方程式を作るまでの流れが、分かりやすいかどうかは別にして、しっかりしているので、とりあえずそこまで読めばいいと思います(2章まで)。それ以降は別のもっと親切な本を読んだ方が効率がいいです。
(独学:きつい)
一般相対性論
- リーマン幾何学入門 増補版:朝長康郎著
相対論をやる人に合ってるリーマン幾何学の本です。リーマン幾何学の導入の仕方が相対論の本に書いてある数学部分の内容に近いので、数学的なリーマン幾何学の本より読みやすいです。なので、入門的な相対論をやった後により専門的な内容に行こうとするときに読むのに適しています。もしくは、相対論の本に書いてあるリーマン幾何学部分の代わりとして最初に読んでしまうのもいいと思います(相対論で取りあえず必要になる部分は100ページ分ぐらい)。
この本のいいところは単語の説明がかなり分かりやすく書いてある点なので、斜め読みでも結構役に立ちます。ユークリッド空間からリーマン空間に行くときのギャップに対応できれば(読み飛ばしてもどうにかなりますが)、おそらくそんなに苦労せずに読めると思います。途中計算もわりと丁寧に書いてある部分がそこそこあります
ちなみに、リッチテンソルの定義が1番目と4番目の添え字の縮約になっています。
(独学:線形代数の知識があれば多分可)
- 一般相対性理論:内山龍雄著
R.Adlerと同じような構成になっていて、カー・ブラックホールの導出も同じ方法をとっています。この本にはスピノール算の説明が載っている上に日本語の本にしては詳しく式が書かれています。最初に読む本として適しているというわけではないですが、一般相対論の本は一冊で済ませたいという人には向いていると思います。絶版だと思ってたら復刊が出たようです。
計量は(-,+,+,+)
(独学:やや可だがシュッツ等と平行して読んだほうがいい)
- 一般相対論:佐々木節著
入門的な相対論の本の後に読むような内容です。シュッツや佐藤勝彦著の本に比べると数学がやや前面に出てきているのに説明が少ないので、これ一冊で理解しようとするのは難しいです。
ページ数の少ない本なので細かく説明されていませんが、そのおかげで欲しい説明や関係式を探すのがお手軽になっているので、コンパクトな辞書として役に立ちます。
また、宇宙論についてはあまり書かれていません。
計量は(-,+,+,+)
(独学:かなり不向き)
- 相対性理論:佐藤勝彦著
これとシュッツの本があればほぼ十分だと思えるぐらいの標準的な本です。ただし、この本は有名なわりに誤植がパラパラとあるために1人で読むときには注意が必要です(版が新しいと直っているかも)。索引が手抜きかと言いたくなるほどに雑です。
初めて相対論をやる人には説明がわかりづらい部分がある上に、ちゃんと式を追っていこうと思うと苦労します。それでも物理としての相対論を理解するにはいい本です。
計量は(-,+,+,+)
(独学:数学に強い人でやや可)
- 相対論入門:B.F.シュッツ著(江里口良治・二間瀬敏史共訳)
標準的な相対論の入門書で、重要とおぼしき所は強調されているという中途半端な親切さがあります。特徴としては言葉による説明が多く、グラフなんかも載っていてイメージしやすい作りになっていて、その反面数式が大雑把に求められています。
計量は(-,+,+,+)
(独学:まんべんなくやや可)
- Introduction to General Relativity Second Edition:R.Adler,M.Bazin,M.Schiffer著
導出方法の元ネタの本です。この本を元にしていたので共変微分の記号が一般的なのと異なっています。Introductionと言っているわりには突っ込んだとこまで書かれていて、他の入門的な本に比べたら深く、英語が苦にならない限りかなり優秀な本です。ただし、数学部分がかなり突っ込んで書かれており、専門的なことに進もうとしない限り必要ないことが書かれているので他の本で触れていないような数学は飛ばすべきです。
この本とChandrasekharの本ぐらいにしか詳しいカー・ブラックホールの導出方法は書かれていません(まだ読んだことのない本に書いてあるかもしれませんが)。ちなみに絶版です。
計量は(+,-,-,-)
(独学:可だが時々アウト)
- The Mathematical Theory of Black Holes:S.Chandrasekhar著
題名の通りブラックホールについて書かれた本で、読み物としては使えないものです。入門的な相対論の本を読んだ後にブラックホールについて詳しく知りたいという人用なかんじです。
始めに微分幾何の説明をしていますが、入門的な微分幾何の本の最初の方を読んでからのほうがわかりやすいです。式はかなり丁寧に書いてあり、リーマンテンソルの成分が全て載っていたりもします。また、R.Adlerとは違う方法でのカー解の導出法も書かれています。
ニューマン・ペンローズ技法あたりの説明はこの本に従っています。
計量は(+,-,-,-)
(独学:入門的な相対論をちゃんとやった人なら可)
相対論的量子力学,QED関係
- 相対性理論:江沢洋著
題名が紛らわしいですが特殊相対性理論までの本です。特殊相対性理論は高校生でも分かるというのを信じて高校数学の感覚で読むときついです。一般的な電磁気学の本を読んでマクスウェル方程式まで出せた人なら多分問題なく読めます。ただ、ちゃんと段階を踏んで説明していますし、途中式が結構書いてあるので無理やり追える人もいるかもしれません。また、構成が2段階になっているので、すでに特殊相対性理論を知っている人が最初から読むと2度手間、もしくは欲しい情報になかなかたどり着けないという可能性があります。
後は特殊相対性理論の本によくあることですが、文章との相性次第で、これは実際に読んで判断してください。
一般相対性理論をやろうという人より、場の量子論をやりたい人にあってると思います。
付録のスピノールの説明はなんで入れたんだろうか。
計量は(+,-,-,-)
(独学:可。ただし高校数学だけの経験だときつい)
- 相対論的量子力学:西島和彦著
この本もGreinerの本と同じように場の量子論を使わずに説明していて、場の量子論を使わない場合の限界を示しています。
説明はこの類の中ではわかりやすくかかれている方になっていると思います。
ただ、数式はそれなりに詳しく書かれてますが見てすぐにわかるというレベルのものではないので、完全に読破するには本気でやらないと無理です。
何がしたいかが簡潔にまとまっているので、細かい導出は無視して読んでいくといいかもしれません。
(独学:かなり不向きな上、計量の定義が独特)
- クォークとレプトン:F・ハルツェン、A・D・マーチン著(小林てつ郎、広瀬立成訳)
場の量子論を使わずに素粒子物理について書いています。この本の7章まで読んだ後にGreinerを読むと結構わかりやすくなりますし、Greinerよりは見通しがいいかもしれません。素粒子の知識がないなら3章から読むのをお勧めします。また、所々にある問題の答えも詳しく書かれているので、いきなり結果が書かれている計算でなければ大抵は追いかけられると思います。難点として、文章が分かりづらいところがちらほらある点と専門用語を知ってるものとして書かれている点です。
結構雑にですが、QCDや電弱相互作用についても書いてあるので、これ一冊で標準模型までの話を済まそうと思えば済ませられます。
(独学:多分可)
- 素粒子物理学:R.P.ファインマン著(大場一郎訳)
話がまっすぐなのでわかりやすいといえばわかりやすい内容になっています。ただし、数式は途中計算ほとんどすっ飛ばして書かれているのでどちらかというと物理を理解するための本です。
(独学:かなり不向きな上、入門用じゃない)
- Relativistic Quantum Mechanics:W. Greiner著
- Quantum Electrodynamics:W. Greiner, J. Reinhardt著
この二つの本の流れに完全に乗って説明しています。
むしろ抜き出して日本語訳して編集かけたようなものなので、原本を読むことをお勧めします。このGreinerのシリーズは計算が丁寧に書かれているので一人で勉強する人にはお勧めです。ただ誤植が結構あります(新しい版では少なくなってるのかも)。
(独学:可だが、説明がわかりづらい)
- Relativistic Quantum Mechanics:A. Wachter著
Greinerの本の簡易版みたいな本です。ほとんど同じ内容を扱っていて、途中式はGreinerほどではないですが詳しいですし、説明が分かりやすいです。必要な知識の説明がそれほど省かれずに書かれているので、前提知識をそれほど要求されないです。
QEDまでが1冊にまとめられているので便利ですし、場の量子論の準備として勉強するのに向いています。ただし、くり込みの計算はしっかり書かれていません。
(独学:可)
場の量子論
- 経路積分と量子電磁力学:杉田勝美、岡本良夫、関根松夫著
Greinerのシリーズ並に式が詳しく書かれている本で、1ループの計算なんかも頂点以外は詳しく書いてあります。
初心者にとって重要なのは、前半をどれだけ上手く突破できるかだと思います。前半で経路積分の構成をかなり細かく丁寧に行っているので親切なんですが、それが経路積分を知らない人には挫折のきっかけになりそうです。他にもグラスマン数、拘束系などの説明も書かれていますが数学がわりと前面に出ているので、慣れてない人には相当大変です。
経路積分の構成と摂動計算が主体なので、QEDの物理を知る本としてはほとんど役に立ちません。
(独学:数学に強い、もしくは要領がよければ可)
- 経路積分法−量子力学から場の理論−:M.S.スワンソン著(青山秀明、川村浩之、和田信也訳)
経路積分を知るために最初に読む本としては使いづらいですし、場の量子論の初心者に向けては書かれていないです。そのわりに理論の概観的な説明が多く、ちゃんと分からせるような書き方がされていないです。なので、非常に読むタイミングが難しいです。何にしても致命的なのが説明が分かりづらい点で、このせいで中途半端さがさらにむき出しになっています。
ただ、群論、量子力学の数学、拘束系に関して十分な知識があるなら最初に読むのも一つの手かもしれません。発展的な内容に進むために必要な道具(よく省かれる基本的な式変形とか)がさらっと書いてあったりするので、中途半端に変な入門書を読むよりは後々役に立ちます。こんな性質の本なので、知ってる人には優秀、知らない人には???という印象を与えやすいです。専門家と一緒に読むと効果的かもしれないです。
(独学:不向き、特に中盤以降)
- 場の量子論-摂動計算の基礎-:日置善郎著
場の量子論の入り口部分を丁寧に説明している本です。手っ取り早くくり込みが出てくる前までの散乱計算が出来るようになりたい人向けです。途中計算が詳しいので、典型的な計算方法を知るのにも役立ちます。
ただ、扱っている内容が少ないので、場の量子論を勉強する初期の頃以外に使いどころがほとんどないです。なので、より専門的な本だと最初から何を言っているのが分からないという人が補助的に使う本というかんじです。
(独学:可)
- 素粒子物理:牧二郎、林浩一著
素粒子の分野に興味があり、場の量子論を勉強しようと思った人が最初に読むと便利な本です。細かいことを気にせずにざっと目を通しておくだけでも、場の量子論の入門的な本が読みやすくなりそうです。
あれば便利、なくても特に困らないといったかんじです。
(独学:可)
- An Introduction to the Standard Model of Particle Physics:W.N. Cottingham, D.A. Greenwood著
題名の通り標準模型の本なんですが、appendixを除いた約180ページ中約80ページが場の量子論の基本的な内容です。残りはワインバーグ・サラムモデル関連の話をそこそこしっかりして、他の話を簡単に紹介するというかんじです。簡単に言えば、牧二郎、林浩一著の素粒子物理を拡張したような内容で、斜め読みする分にはいいかもしれません。こんな構成なので、これ一冊で十分という作りではないです。弱い相互作用関連を本気でやるかどうか分からないがワインバーグ・サラムモデルはなんとなく知っておきたいという人や、メインの本の補助的な本が欲しい人が使うとかに向いている気がします。
途中計算は計算を追わせる気があるように書かれているものなら、全く追えないというほどは省かれていません。
(独学:書いてることに突っ込みをいれなければやや可)
- Field Quantization:W. Greiner, J. Reinhardt著
正準量子化と経路積分による量子化の方法が両方とも丁寧に書いてあります。その代わり散乱計算やくり込み等については触れてません。量子化の方法が分かればいい人や場の量子論を初めてやる人用で、Ryderの本かこれを読んだあとにPeskinを読むと割かしスムーズに読めます。また、このシリーズの特徴通り計算が相変わらず詳しいです。
(独学:可)
- Gauge Theory of Weak Interactions:W. Greiner, B. Muller著
GreinerのRelativistic Quantum MechanicsとQuantum Electrodynamicsを読んでおり、場の古典論(もしくは解析力学)を知っていれば一応読めるようにはなっています。最初に弱い相互作用の話を進めていき、非可換ゲージ、ワインバーグ・サラムモデル、ハドロン、統一理論といった構成です。弱い相互作用に関係した部分は主にこの本とハルツェンを使っています。
(独学:可だが、物理をわかりやすく説明している本と一緒に読んだほうがいい)
- Foundations Of Quantum Chromodynamics:T. Muta著
場の量子論の入門が終わってQCDに興味がある人用です。なんですが、QCDそのものの話はそれほどしていなく、主に非可換ゲージ場の摂動論を扱っています。この本の特徴は摂動論でのくり込みの話をかなりしっかりとしていることです。
最初に経路積分での非可換ゲージ場の摂動論の話が上手くまとめられているので、非可換ゲージ場をあまり知らなくても読めるようになっています。なので、経路積分での摂動論に初めて触れる人にも合っていると思います。1ループの計算もすごく詳しいというわけではないですが、ちゃんと書いてあります。
非可換ゲージ場の摂動論を知るための本なので、QCDの現象を詳しく知りたいという人は別の本を選んだ方がいいです。
(独学:可)
- An Introduction to Quantum Field Theory:Michael E. Peskin, Daniel V. Schroeder著
正準量子化あたりはこの本にのっとっています。標準的なゼミや講義用の本らしく、かなりいろいろなことが書いてあります。しかし、初めて場の量子論をやる人にとっては所々誰かに説明して貰わないと何を言ってるのかわからない部分がありますし、途中計算を結構省いてるので出来る人はすぐ出来るが、出来ない人は中々出来ないという場合があります。
全体的(特にpartI)に何が言いたいのかが分かりづらいので、最初に1人で読む本としてはあまり向いていない気がします(専門家を含む集団で読むと優秀な本なのかしれません)。
(独学:まじめに勉強してきた人ならやや可)
- Quantum Field Theory:Lewis H. Ryder著
経路積分あたりはこの本にのっとっています。基本的な部分の説明で変にひねったことをしてこないので、場の量子論の入門としてはPeskinより優秀です。計算は丁寧に追ってありますし、1ループ計算も載っていて、second editionには超対称性も載っています。それでも入門的な作りなためなのか、説明を若干省きすぎる傾向があります(かなり雑な部分もあります)。本気で場の量子論をやるなら、他にもう一冊読んだ方がいいです。
(独学:やや可)
統計力学
- 統計力学を学ぶ人のために:芦田正巳著
統計力学をやる時に最初に読んでおくと良い本です。統計力学は何がしたいのかが分かりやすく書いてありますし、途中計算も丁寧です。ただ、分かりやすく説明しようとしているからというのもありますが、曖昧な部分が散見しています。なので、最初は書いてあることを素直に受け止めながら読んでいくと良いと思います。
この本を読んでからより細かく説明している本に行くと効率がいいです。
ネットで公開されています。
(独学:可)
- 統計力学演習:桂重俊、井上真著
問題形式で統計力学の説明をしている本です。構成的に、統計力学でどんな計算をするのかを取り合えず知りたい人に合ってると思います。
問題、解答の構成になっているわりにはかなり説明がしっかりしているので、問題形式でない本を読まなくてもどうにかなります。ただし、しっかりしていると言っても問題形式にしてはという程度なので、何のためにこんなことを考えてるんだっという疑問は持ちやすいです。
解答の計算を変に省いている箇所が少ないので、メインに読んでいる本が省いている数式の補足としても役に立つかもしれません。もしくは、この本で説明が足りないと思った箇所をちゃんと説明している本を別に選べば効率がいいです。
(独学:可)
- 大学演習 熱学・統計力学:久保亮五編
熱力学と統計力学の問題集の親玉です。手元にあるといざというとき便利です。各章の最初に簡単な説明があり、それが上手くまとまっています。問題にもよりますが、問題の解答はそれなりにっていう程度の詳しさなので、解答を見ればすぐに分かるというものではないです。
問題集なんですが、各章の冒頭の説明を読むだけで十分です。問題は必要があるときに触れればいいと思います。というより問題が豊富すぎて、どれが必要になるか分からないです。
(独学:補助的に読むならやや可)
- 統計力学I,II:田崎晴明著
かなりクセの強い本です。統計力学を理解するための本であって、入門用ではないです。丁寧に統計力学の導入を説明しているんですが、初心者には厳しいです。ある程度理解している人には長所なんですが、初心者にとって厄介なのは詳しく書かれているせいで分かりづらくなっている点です。途中計算もそれほど詳しく書いてあるわけではないです。
扱ってる内容はよくある統計力学の本と大差ないんですが、アプローチの仕方が独特です。他の本に書いてある内容とすり合わせて読んでいくと理解が深まると思います。著者の考え方がわりと前面に出ているので、それを検証する意味でも別の本は読んだ方がいいです
構成的に仕方なかったのかもしれませんが、9章までは一冊にまとめて欲しかったです。
(独学:がんばればやや可)
- 統計力学:長岡洋介著
統計力学の標準的な内容です。文章は読みやすいですし、式もちゃんと追っていけばなんとか追えそうな程度には書いてあるので入門用としてはいい本です。なんとなく統計力学を知りたいという人にも向いていると思います。
(独学:可)
- 統計物理学:西川恭治、森弘之著
一般的に使われる統計力学とは違う構成になっている本です。簡単に言えば、場の概念と経路積分を使った非相対論的な統計力学です。なので、標準的な統計力学と場の理論をやってない人が読むと早々にわけが分からなくなりかけます。1人で最初に読む本としては向いていないかもしれません。経路積分とグリーン関数の説明をちゃんと突破できるかどうかが問題になってくると思います。
(独学:結構大変)
有限温度の場の理論
- Thermal Field Theory:M. Le Bellac著
虚時間法がメインで、実時間法は一応触れました程度に書いてあります。Kapustaより場の量子論側の視点から書いてありますが、最初に読むのには向いていません。内容は1990年代に出てきたHTL近似等の最近の話題が書かれています。
場の量子論の定式化を有限温度にスライドさせるようにして説明しているので、話の流れ自体は分かりやすいですが、説明の雑さと途中計算のすっ飛ばし具合で非常に読みづらくなっています。
(独学:かなり不向き。数学に強いなら可)
- Finite Temperature Field Theory:A. Das著
虚時間法、実時間法、Thermofield dynamicsの定式化が全部載っているので、定式化を知りたい人に合っています。説明も分かりやすい部類に入るので、最初に読むのに適しています。数式は丁寧に書いてあるところとないところが入り混じっています。
後半の内容は理論的な話がほとんどで、現象の話はほぼないです。また、虚時間法での和の計算方法についてはあまり書かれていません。
ちなみに、ゼロ温度での対称性の破れやcutting ruleの説明がわりと分かりやすく書いてあったりします。
(独学:細かいことを気にしなければ可)
- Finite Temperature Field Theory:J. I. Kapusta著
有限温度の場の理論の本の中で一番使われているようです。虚時間法や有限温度での現象を知りたい人に合っています。
場の量子論と統計力学は知っているとして書かれているので、知らない人には向いていません。ファインマン則とくり込みまでは知っておいた方がいいです。内容は代表的なものを扱っているので、この分野に興味のある人は読んでおいた方がよさそうです。ただし、途中計算と説明が雑にしかされていないので、真面目に追っていくのは大変です。ちなみに虚時間法しか扱っていません。
second editionが出てHTL近似の話を加えるなど相当内容が多くなっていますが、相変わらずちゃんと説明しろと突っ込みたくなるかんじです。
(独学:やや不可。フォローしてくれる人がいないと遠回りしそう)
弦理論
- String Theory Demystified:D. McMahon著
初心者向けの入門書です。基本的にはZwiebachに近い構成で、Zwiebachの4章までを削って、共形場理論と超弦理論の話を増やしたような内容です。説明はそれなりに丁寧で、途中計算は詳しく書いてあります。ただし、面倒な計算の場合は結構省かれてます。
Zwiebachほど親切に書かれてはいませんが、より専門的な本に進むことを前提にしているならこちらの方がいいかもしれません。
(独学:可)
- A First Course in String Theory:B. Zwiebach著
弦理論の数少ない初心者向けの入門書です。よっぽどの自信がない限りこの本から始めたほうがいいです。弦の運動、電磁場、特殊相対論などの弦理論で必要になる知識の説明も載っています。知らないと求め方を思いつくのが難しい計算の途中式もちゃんと書いてあり、説明もかなり丁寧です。
超弦理論の部分は簡易的な話しかしていないですが、弦理論の一般教養的な話が分かればいいという人なら十分です。
ただし弦理論を本格的に勉強しようと思うなら、どうしてもより発展的な内容が書いてある本が必要になります。また、この本は光円錐ゲージで話を進めているので、共変形で進める部分で2度手間になります。
日本語版がついに出たようです。
(独学:可)
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